先日、ある経営者から「外国人を雇用する予定だが、使える助成金はありますか?」との質問を受けました。

在留外国人の推移ですが年々増加しており、令和元年6月末時点では282万9426人にものぼっています。また外国人労働者数は平成30年で146万人強となっており、前年と比べると33.9%も増加しています。

出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法が、平成31年4月1日から施行されており、今後も外国人労働者が増加することでしょう。

弊所ではこれまで日本人の助成金を扱っていましたが、今後は外国人を雇用される企業も増えて来ていますので、ここはシッカリと調べておかねばということで記事をまとめてみました。

国内で働くことができる外国人の在留資格について

国籍を持たない外国人が日本国内で活動する際には、入国審査を受け「ビザ(在留資格を表す証書)」を取得する必要があります。

そこで外国人が日本で働く場合に必要な在留資格からみていきましょう。

身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)
在留資格 該当例
永住者 永住許可を受けた者
日本人の配偶者等 日本人の配偶者・実子・特別養子
永住者の配偶者等 永住者・特別永住者の配偶者,我が国で出生し
引き続き在留している実子
定住者 日系3世,外国人配偶者の連れ子等
就労が認められる在留資格(活動制限あり)
在留資格 該当例
外交 外国政府の大使,公使等及びその家族
公用 外国政府等の公務に従事する者及びその家族
教授 大学教授等
芸術 作曲家,画家,作家等
宗教 外国の宗教団体から派遣される宣教師等
報道 外国の報道機関の記者,カメラマン等
高度専門職 ポイント制による高度人材
経営・管理 企業等の経営者,管理者等
法律・会計業務 弁護士,公認会計士等
医療 医師,歯科医師,看護師等
研究 政府関係機関や企業等の研究者等
教育 高等学校,中学校等の語学教師等
技術・人文知識・国際業務 機械工学等の技術者等,通訳,デザイナー,語学講師等
企業内転勤 外国の事務所からの転勤者
介護 介護福祉士
興行 俳優,歌手,プロスポーツ選手等
技能 外国料理の調理師,スポーツ指導者等
特定技能(注1) 特定産業分野(注2)の各業務従事者
技能実習 技能実習生

(注1)平成31年4月1日から
(注2)介護,ビルクリーニング,素形材産業,産業機械製造業,電気・電子情報関係産業, 建設,造船・舶用工業,自動車整備,航空,宿泊,農業,漁業,飲食料品製造業,外食業 (平成30年12月25日閣議決定)

上表の「特定技能」が平成31年4月1日より追加された在留資格で、外国人労働者の受け入れを拡大する資格ということになります。

「特定技能」には、次の14分野あります。
・介護業
・ビルクリーニング業
・素形材産業
・産業機械製造業
・電気・電子情報関連産業
・建設業
・造船・船用業
・自動車整備業
・航空業
・宿泊業
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業

さらに「特定技能1号」と「特定技能2号」に分けられており、建設、造船・舶用工業の2分野は「特定技能2号」となっています。

特定技能1号のポイント

○ 在留期間:1年,6か月又は4か月ごとの更新,通算で上限5年まで
○ 技能水準:試験等で確認
 (技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
○ 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認
 (技能実習2号を修了た外国人は試験等免除)
○ 家族の帯同:基本的に認めない
○ 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象

特定技能2号のポイント(建設、造船・舶用工業の2分野)

○ 在留期間:3年,1年又は6か月ごとの更新
○ 技能水準:試験等で確認
○ 日本語能力水準: 試験等での確認は不要
○ 家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者,子)
○ 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外

在留資格を利用して外国人労働者の雇入れを行う場合の手順

1 特定技能における各分野別の協議会に加盟する
2 求人を行う
3 採用試験を行う
4 特定技能雇用契約を締結する
5 「1号特定技能外国人支援計画」を策定
  ※2020年以降に2号特定技能が実装される予定。
6 在留資格「特定技能」を有している外国人を雇い入れる。
  ※特定技能試験合格前に就労する事は出来ません。

事業主の方は、外国人の雇入れ離職の際、在留資格・氏名をハローワークに届ける義務があります。
引用:厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/index.html

助成金が利用できない外国人の雇用

1 外国人「技能実習」の受け入れ
 技能実習制度は、実習生は事業主から直接賃金を受け取るのではなく、組合が事業主から受け取った手数料の中から実習生に「手当」が支給されます。通常の雇用とは異なることから事業主に対して適用できる助成金制度はありません。

2 「留学生」の雇用
 在留資格が就学目的であり、就業時間も週28時間の制限があります。
 また在学中の正規労働が禁止されています。

3 不法就労
 留学ビザを持つ外国人が就労をする「不法就労」が後を絶ちません。
 もちろん不法ですので助成金制度が適用されることもありません。

外国人の雇用で利用できる助成金

前述の「助成金が利用できない外国人の雇用」を除けば、活用できるコースがあります。

1 人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)
前提として、時間外労働改善助成金の「時間外労働上限設定コース」「勤務インターバル導入コース」「職場意識改善コース」の支給を受けた中小企業事業主であること。

この事業主が、新たに労働者を雇い入れ雇用管理の改善を計画・実施した場合に、1人当たり60万円(短時間労働者の場合40万円)が支給される制度です。

ただし、在留資格が「特定技能」の場合は、短時間労働および副業が禁止されていますので、短時間労働者の区分での申請はできません。

上限は10名までとなっています。
生産性要件を満たす場合は、目標達成助成として、1人あたり15万円が追加支給されます。

〇在留資格「特定技能1号」及び「特定技能2号」は、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業に受け入れるものであり、在留資格「特定技能1号」及び「特定技能2号」の外国人労働者の雇い入れは、働き方改革に取り組む中小企業の人材確保を支援する本助成金の目的にそうものであることから、本助成金の各種要件を満たす場合は対象労働者に含まれます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199313_00001.html
厚生労働省HPより引用

2 人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、主に雇入れた後に適用でき、労働者に対して職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための職業訓練などを、計画に沿って実施した場合に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

人材開発支援助成金には7種類のコースがありますが、そのうち就労制限のない在留資格以外でも活用できる3つのコースを紹介します。

① 特定訓練コース
 労働生産性の向上に資するなど訓練効果が高い訓練を実施する事業主に対して助成されるコースです。これにより企業内における人材育成の促進が目的とされています。

② 一般訓練コース
 特定訓練コースに該当しない訓練について、幅広く助成することにより、中小企業における人材育成を促進することが目的とされています。

③ 教育訓練休暇付与コース
 労働者の自発的な職業能力開発の機会の確保を促進することを目的にした助成コースです。

3 キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者などを正社員に転換したり、処遇改善の取組を実施した事業者が助成される制度です。この助成金は主に就労に活動制限のない在留資格(永住者など)の外国人労働者が対象となります。

適用可否について下表にまとめています。

キャリアアップ助成金に係る労働者が外国人であるケース
出展:厚生労働省HP:平成31年4月1日以降の取組に係るQ&A

  正社員化 賃金規定等改定

健康診断制度
賃金規定等共通化
諸手当共通化
選択的適用拡大
労働時間延長

外国人技能実習生
就労目的で在留が認められる外国人(在留資格の例「技術・国際業務」)
在留資格が「永住者」
在留資格が「定住者」
在留資格が「特定活動(EPA受け入れ人材(看護師・介護福祉士))」
在留資格が「特定技能第一号」
在留資格が「特定技能第二号」

キャリアアップ助成金の7コースで「正社員化」と「賃金規定改定」については、申請できない場合がある様ですが、それ以外のコースでは対象となっています。

厚生労働省では、在留資格やその在留資格に基づく在留期間、在留目的を考慮した上で助成金対象になるか否かの判断がなされています。

厚生労働省管轄の雇用関係助成金においては、他の助成金についても以上と同じような考え方で、運用されていくのではないでしょうか。

外国人の雇用に足踏みをされている事業主の方の参考になれば幸いです。