育児・介護休業法について

令和元年12月27日に、改正育児・介護休業法施行規則および改正指針が公布・告示されました。

この改正により、令和3年1月1日から、育児や介護を行う労働者が、子の看護休暇や介護休暇を、時間単位で取得することができるようになります。

改正前

・半日単位での取得が可能
・1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できない

改正後

・時間単位での取得が可能
・すべての労働者が取得できる(※1)

※1 一定の要件を満たした場合に利用できます。

時間は1時間の整数倍で、労働者の希望する時間数で取得できるようにします。
法令の定めは「中抜け」なしの時間単位の休暇です。

介護休業法や育児休業制度は、大企業だけでなく、中小企業も含め、すべての企業で利用できます。要件を満たした人が申し出れば、たとえ会社に規則がなくても、育児・介護休業法に基づき取得することが可能となります。

就業規則の改定、労働協約の改訂が必要

育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護のための所定外労働、時間外労働および深夜業の制度、ならびに所定労働時間の短縮措置等について、就業規則に記載します。

既に上記記載がある場合では、取得できる単位が1日から1時間単位、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者(パート・アルバイト)も取得できる内容への改訂を行わねばなりません。

両立支援等助成金について

時間単位で利用できる有給の、子の看護休暇制度や、介護休暇制度を導入し、休暇を取得した労働者が生じた要件を満たした事業主には、両立支援等助成金が支給されます。

それでは、介護制度、育児制度についておさらいです。

介護編

現時点では介護の必要がない方でも、いざというときのために制度を知っておくことです。会社を辞めずに仕事と介護を両立できるように備えておきましょう。

仕事と介護の両立支援制度には、介護休業、介護休暇、短時間勤務等の措置、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限があります。これらの制度は、要介護状態の家族を支援する制度です。

要介護状態とは、負傷、疾病、または身体上もしくは精神上の障害により2週間以上の期間にわたり、常に介護を必要とする状態をいいます。

対象となる家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫で、制度の対象者は、要介護状態の家族を介護する労働者です。

パート・アルバイトでも一定の要件を満たせば利用できます。
 ・入社1年以上であること
 ・取得予定日から起算して、93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

介護休業
 ・対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業可能とする

介護休暇
 ・対象家族1人の場合は、年5日、2人以上の場合は年10日まで取得できる
  取得単位:令和2年12月31日までは、1日または半日単位
       令和3年1月1日からは、1日または時間単位

短時間勤務等の措置
 ・利用開始から3年以上の期間。2回以上取得可能。

所定労働時間の制限(就業時間で定められている勤務時間を超える労働、いわゆる残業のこと)
 ・労働者からの申し出があれば、所定外労働を免除しなければならない。
 ・介護が終了するまで利用できる。

時間外労働の制限(労働者の申し出があれば)
 ・1ヶ月で24時間、1年で150時間を超える時間外労働を制限。

深夜業の制限
 ・午後10時から、午前5時までの労働を免除。

育児編

仕事と育児を両立し、働き続けるために育児休業制度が活用されます。

仕事と育児の両立支援制度
 育児休業、子の看護休暇、短時間労働制度、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限があります。

制度の対象者は、子育て中の男女労働者

パートやアルバイトなど雇用期間の定めがある人も、一定の要件を満たせば利用できます。
 ・申し出時点において、入社1年以上であること。
 ・子が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

育児休業
 ・1歳未満の子供を養育するための休業です。
 ・1歳未満の子供1人につき、原則として1回。
 ・保育所に入所できないなどの事情があれば、最長で2歳になるまで延長可能。

男性が育児休業を取得すると、お得な特例があります。
パパ休暇
 ・子供が生まれてから、8週間以内に育児休業を取得し、復帰した場合、特別な事情がなくても、1歳までの間に2回目の取得が可能です。

パパ・ママ育休プラス
 ・両親がともに育児休暇を取得する場合、子供が1歳2ヶ月に達する日までに休業可能。

子の看護休暇
 ・小学校入学前の子供がいる労働者が対象。
 ・子どもが1人の場合は、年5日、2人以上の場合は年10日まで取得できる。
  取得単位:令和2年12月31日までは、1日または半日単位
       令和3年1月1日からは、1日または時間単位

子の看護休暇活用のポイント
 ・子どもが病気や怪我(けが)をした場合に取得可能。
 ・予防接種、健康診断時に取得可能。

短時間勤務制度
 ・3歳未満の子どもがいる労働者が利用可能。
 ・就業規則などで定められている1日の勤務時間を短縮可能。
 (例)通常18時までの勤務時間を、16時までに短縮し、保育園に迎えに行くといういうように活用できる。

所定外労働の制限
 ・労働者からの申し出があれば、所定外労働を免除しなければなりません。
 ・3歳未満の子どもがいる労働者が利用可能。
  例えば「保育園のお迎えに間に合わないので、残業ができない」といった時に活用できます。

先の短時間勤務制度と、この所定外労働の制限のどちらも利用して、勤務時間を短くした上で、残業の免除を申し出ることも可能です。

時間外労働の制限
 ・原則1日8時間、1週間で40時間という法定労働時間を超える労働のこと。
 ・1ヶ月で24時間、1年で150時間を超える時間外労働を制限。
 ・小学校入学前の子どもがいる労働者が利用可能。
  例えば、配偶者と保育園のお迎えを交互に行っているなどで、法定時間外労働の時間数を1ヶ月で24時間以内ならできるといった場合に活用できる。

深夜業の制限(労働者の申し出があれば)
 ・午後10時から午前5時までの労働を免除。
 ・小学校入学前の子どもがいる労働者が利用可能。

介護休業や育児休業を、申し出・取得したことを理由とする不利益な取扱いが禁止されています(解雇、雇止め、降格など)。加えて介護休業や育児休業等に関するハラスメント防止対策を行うことが会社に義務付けられています。

まとめ

・介護休暇・育児休暇の時間単位の取得は、令和3年1月1日から開始される。
・就業規則への記載が必要。
・パート・アルバイトを含めて全ての労働者が取得できる
・両立支援等助成金の適用対象

事業主においては就労環境を整えるために、努力は必要となりますが、一定期間、子育てや介護など家庭の状況から時間的制約を抱えている労働者がいることも事実です。

そのために仕事と家庭の両立支援を進めていくことは、男女労働者が退職を余儀なくされる事態を防ぎ、良い人材の確保・維持の投資として受け止めることで、労働者も事業の発展に貢献することでしょう。