厚生労働省の助成金の不正受給が判明した場合には、事業所名の公表、不正内容などが公表されることになっています。

併せて不正受給した助成金は全額を返還することと、3年間は助成金の支給が停止されるというのがこれまで罰則内容でした。

しかし2019年4月に不正受給についての罰則が、より厳しく変更されていますので助成金を申請する場合には注意しておく必要があります。

助成金の不正受給となるケース

ではどの様な場合に不正受給に該当するのでしょうか、確認しておきましょう。

不正受給とは、偽りその他不正行為により本来受けることのできない助成金を受け、また
は受けようとすることをいいます。

もともと存在していない書類、あるいは実態とは異なっている書類を作成して申請を行い、助成金を受給しようとした場合にあたります。

具体的な例では、離職理由に虚偽がある場合(実際は事業主都合であるにもかかわらず自己都合であるなど)も不正受給に当たります

助成金が実際に支払われた場合も、支払われなかった場合であっても、申請をしただけで不正受給とみなされてしまいます。

不正受給時の罰則の厳罰化

2019年4月に出された厚生労働省の「平成31年度雇用・労働分野の助成金のご案内」に、不正受給の罰則で以下の内容が記載されています。

・不正受給者は5年間は助成金を受けることができない
 不正受給となった場合、不支給決定日または支給決定取消日から5年間は助成金を受けることでできません。

・不正受給した額の弁済として、受給額、延滞金、受給額の20%を返済
 請求金として、不正受給した額、延滞金(年5%)、不正受給額の20%を返済しなければなりません。

・助成金の申請に関与した、社会保険労務士も連帯責任
 助成金の申請に関与した、社会保険労務士、および、訓練実施者も、申請事業主と連帯し請求金を弁済すべき義務が生じます。

・不正受給の事業所名、社会保険労務士名が公表されます。
 都道府県労働局では、次の内容を公表しています。
  ・事業主の名称、代表者氏名
  ・事業所の名称、所在地、概要
  ・不正受給の金額、内容
  ・社会保険労務士または代理人や教育訓練を行う者が不正に関与していた場合、それらの者の名称や所在地等、中でも悪質な場合には刑事告発がなされます。

助成金の受給後に会計監査院の立ち入り検査を受ける場合があります。申請書類は5年間の保管が必要です。検査を受けた場合には速やかに提示できることが大切です。

不正の手口の多くは、
・実際には実施していない研修を実施したかのように偽る
・無期雇用の労働条件通知書を有期雇用に書き換える
・出勤日や労働時間を書き換え、研修時間を水増しする
などの事例があります。

助成金の支給申請書類のチェックは、年々厳しくなっていますし、その罰則も厳しいものになっています。

「少しくらいは実態と異なっても大丈夫だろう」や「これくらいなら気づかれないだろう」などの考えが不正受給につながる事態となってしまいます。

不正受給による事業所名の公表は、社会的信用を大きく損ない、取引先や、金融機関へ大きな影響が出てしまいます。

また昨今、助成金のコンサルタントを名乗る会社が、助成金申請のサポートや指南を行っていることが少なからず見受けられています。

助成金の申請サポートは社会保険労務士のみが行える手続きです。助成金の申請にあたっては、社会保険労務士が携わっているかどうかを確認して下さい。