「キャリア助成金」は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための助成制度です。そのキャリアアップ助成金の中の健康診断制度コースについて見ていきましょう。

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)とは?

このキャリアアップ助成金の健康診断制度コースは、有期契約労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合に助成されるコースです。

正規雇用の従業員は「法定内の健康診断」が義務付けられています。また就業規則でも規定されており、毎年健康診断が実施されています。

しかしこの助成は対象とならない労働者についても、正規社員と同様に健康診断が受診できることに対し助成されるものです。

対象となる労働者は

  • 支給対象事業主に雇用されている「有期契約労働者等」であること※1
  • 雇入時健康診断もしくは、定期健康診断または人間ドックを受診する日に、雇用保険被保険者であること
  • 事業主または取締役の3親等以内の家族ではないこと
  • 支給申請日において離職していない者であること

※1 雇用期間が1年未満(1年以上の雇用が見込まれないこと)、1週間の所定労働時間が、通常の人の4分の3未満のいずれかである人が対象者

です。

受給の条件

受給の条件は、雇用保険適用事業所の事業主であることで、事業所ごとにキャリアアップ計画を作成して労働局からの認定を受けることです。(詳細の条件は厚労省のキャリアアップ助成金についての案内に記されています)

主な条件は、

  1. 雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を置いていること
  2. 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局長の認定を受けていること
  3. キャリアアップ計画期間中に、有期契約労働者等を対象とする健康診断制度※2を労働協約または就業規則に規定した事業主であること
  4. 規定した制度に基づき、キャリアアップ計画期間中に、雇用する有期契約労働者等延べ4人以上に実施すること
  5. 支給申請日において当該健康診断制度を継続運用していること
  6. 当該雇入または定期健康診断の費用の全額を負担すること(労働協約または就業規則への規定が必要)
  7. 当該人間ドックの費用の半額以上を負担すること

※2 この健康診断制度とは、雇入時健康診断、定期健康診断、人間ドックです。

次の場合は対象とはなりません

  • 既に対象となる有期契約労働者等への健康診断制度を導入している場合で、当該健康診断制度の対象労働者を拡大した場合
  • 既に対象となる有期契約労働者等への健康診断制度を導入している場合で、当該健康診断制度の費用の全額負担規定のみを設けた場合

助成額

健康診断制度コースの支給額は次の通りです。
 <>は生産性の向上が認められる場合の額、()内は中小企業以外の額

  • 1事業所当たり、38万円<48万円>(28万5,000円<36万円>)

健康診断制度コースのもらい方(申請手続きの流れ)

手続きの流れを見ていきましょう。

1 キャリアアップ計画の作成・提出
  (転換・直接雇用を実施する日までに提出)

・雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置する。
・「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受ける。

2 就業規則、労働協約に健康診断制度を規定

・キャリアアップ計画期間中に健康診断制度を規定する。
・労働基準監督署に改定後の就業規則を届ける必要がある。
・10人未満の事業所は届出の代わりに、労働者代表の署名押印による申立書も可。

3 健康診断等を述べ4人以上に実施

・就業規則、労働協約に基づき法令に義務付けられていない有期契約労働者等に実施。

4 支給申請

・4人以上に実施した日を含む月の分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請する。

5 審査、支給決定

・支給決定の審査に時間を要する場合がある。(概ね6か月から1年)

生産性の向上(生産性要件)とは?

生産性を向上させた企業が労働関係助成金を利用する場合、その助成額または助成率を割増しするものです。

助成金の生産性要件は、支給申請を行う直近の会計年度の「生産性」が、その3年度前と比べて6%以上伸びていることです。

また1%以上(6%未満)の伸びの場合は金融機関から一定の「事業性評価」を得ている必要があります。

生産性要件の詳細についてはこちらもご覧下さい

生産性要件の計算方法は、厚生労働省のホームページに「生産性要件算定シート」が掲載されていますので、そのシートをダウンロードし、該当する勘定科目の額を損益計算書や総勘定元帳の各項目から転記し算定します。

生産性要件を満たした場合には助成金が割増しされますので、算定の手間はかかりますが活用されると良いでしょう。