2020年4月1日から中小企業も施行開始です!

働き方改革法の改正事項に「時間外労働の上限規制」がありますが、いよいよ2020年4月1日から中小企業も施行開始となります。
(大企業等は、既に2019年4月から開始しています)

これにより時間外労働は原則として1か月について45時間、1年について360時間を超えないようにしなければなりません。

そして今回の法改正では、実際の労働時間が上限を超えたとき「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」とする罰則が定められました。(労基法119条)

とは言いながら「生産性の向上を図り時間外労働の削減」をしたいけれど、どんな取り組みをすれば良いのか、どの様な措置をとれば良いのかわからないという事業主の方もおられることでしょう。

労働時間の短縮に取組む中小企業向けの助成金

※「時間外労働等改善助成金」は、令和2年4月1日以降に「働き方改革推進支援助成金」に名称変更されました。

そんなお悩みを支援する中小企業向けの助成金があります。それは「時間外労働等改善助成金」で時間外労働の上限規制に対応するため、労働時間の短縮に取り組む事業主に助成されるものです。

目的に応じて5つのコースが設けられています。

①時間外労働等上限設定コース
②勤務間インターバル導入コース
③職場意識改善コース
④団体推進コース
⑤テレワークコース

ここではそのうちの一つ「時間外労働等上限設定コース」を説明していきたいと思います。

このコースは成果目標を達成した場合に、支給対象となる取り組みの実施に要した経費の一部が支給されます。(支給額の上限は最大200万円までです)

時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)の制度解説
厚生労働省のYoutubeチャンネルにこのコースの解説動画がアップされています。

動画で基本的な申請の要件、手続きはご確認いただいたでしょうか?動画の内容に沿ってコースの詳細を見ていきましょう。

この動画では、時間外労働上限設定コースの次の点について説明がありました。
 1 交付申請ができる事業主の要件
 2 支給対象となる取り組み
 3 成果目標
 4 助成上限額
 5 助成金の申請の流れ

ではそれぞれについて見ていきましょう。

交付申請ができる事業主の要件

・申請時点で特別条項付き36協定を締結している中小企業
・過去2年間に月45時間を超える残業の実績が複数回ある企業
となっています。

支給対象となる取り組み

1 労働管理担当者に対する研修
2 労働者に対する研修、周知・啓発
3 外部専門家によるコンサルティング
4 就業規則・労使協定等の作成・変更
5 人材確保に向けた取り組み
6 労務管理ソフトウェア等の導入・更新
7 労務管理用機器の導入・更新
8 デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9 テレワーク用通信機器の導入・更新
10 労働能率増進に資する設備・機器等の導入・更新

参考:時間外労働上限設定コースの活用事例
https://www.mhlw.go.jp/content/000553376.pdf
引用:厚生労働省のHP

成果目標

「現在締結している36協定の時間数の見直しを行い、労働基準監督署へ届出を行うこと」
1 時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
2 時間外労働時間数で、月45時間を超え、月60時間以下かつ、年間720時間以下に設定
3 時間外労働時間数で月60時間を超え、月80時間以下、年間720時間以下に設定

助成金の上限額

時間外労働時間数の減少幅により、助成上限額が変動します。

例えば、申請時点で月80時間を超える36協定を締結している場合に、36協定の見直しを行い、時間外労働時間数を月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定した場合は、上限額は150万円になります。

さらに先の成果目標に加え、週休二日制の導入に向けて、4週あたり5日〜8日以上の範囲内で休日を増加させることを成果目標に加えることができます。

数が実施前と比べて実施後に4日以上増えた場合は100万円が加算額となります。

助成上限額

助成額は取り組みの実施に要した経費の一部を成果目標の達成状況に応じて支給されます。助成金の支給額は以下のいずれか低い方の額となります。
1 上限は200万円
2 上限設定の上限額及び休日加算額の合計額
3 対象経費の合計額✕補助率3/4※
※常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で設備等を導入する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5となります。

助成金の申請の流れ

1 交付申請期限までに企業の所在地を管轄する労働局に交付申請書と事業実施計画書を提出する
2 労働局の審査後、交付決定の通知があれば、事業実施計画で定めた期間中に支給対象となる取り組みや、成果目標の達成に向けた取り組みを実施する
3 実施後、支給申請期限までに、支給申請書を提出する
4 労働局の審査後、支給決定が通知された後、助成金が支給される

事業で認められる経費

下表の経費が対象となります。

経費区分  内容
謝金  専門家謝金
旅費  専門家旅費、職員旅費(外国旅費、日当、宿泊費を除く) 
借損料  機器・設備類、ソフトウェア等のレンタル、リース等の費用、ICTを利用したサービスの利用料(リース料、レンタル料、サービス利用料等に含まれる諸経費)
会議費  会議の費用(会場借料、通信運搬費含む)
雑役務費  研修等受講料、機器・設備類、ソフトウェア等の保守費用
広告宣伝費  求人広告の掲載、合同企業説明会への出展、求人パンフレット・ダイレクトメール等の作成等の費用
印刷製本費  研修資料、マニュアル等作成の費用
備品費  図書、ICカード、自動車(乗用自動車等を除く)等の購入費用、ソフトウェア等の購入、改良等の費用(設定費用、社員等に対する研修費用を含む)
機械装置等購入費  機器・設備類の購入、改良等の費用(設定費用、社員等に対する研修費用を含む)、機器・設備類の設置、撤去等の費用
委託費  調査会社、コンサルタント会社、システム開発会社、広告代理店等への委託費用 

時間外労働上限設定コースのまとめ

今回は中小企業による労働時間等の設定改善を支援する「時間外労働等改善助成金」の「時間外労働上限設定コース」について紹介しました。

このコースは生産性の向上を図る取り組みをにより長時間労働を見直し、時間外の労働時間を削減することを目指すものです。

月45時間を超える時間外労働が生じている場合や、36協定の見直しを検討している場合には、活用できる助成金ではないでしょうか。

条件に適合していれば、もらえる助成金ですので期限までに手続きされることをお勧めします。