労働関係助成金の支給額には、通常の額と生産性の向上が認められる場合の額と2種類の額が示されています。
「生産性の向上が認められる場合」は「生産性要件」と呼ばれていますが、ではどの様なものか見ていきましょう。
目次
生産性要件が設けられている背景は?
我が国は、今後労働力人口の減少が見込まれる中で経済成長を図っていくためには、労働生産性を高めていくことが不可欠です。このため、事業所における生産性向上の取組みを支援するため、生産性を向上させた事業所が労働関係助成金(一部)を利用する場合、その助成額又は助成率の割増等を行います。
引用:厚生労働省HPより
政府が進める働き方改革のテーマの一つに「賃金引き上げ・労働生産性向上」があり、生産性向上と賃上げを実現した企業に対して、助成金制度が設けられています。
ですので、生産性の向上が認められる企業には、助成金が増額しましょうということです。
つまり条件を満たせば通常の助成額より多くもらえることになります。
生産性要件とは?
では生産性要件とはどの様なものなのでしょうか?
これには算定方法が定められています。その算定方法は次の通りです。
(1)助成金の支給申請を行う直近の会計年度にける「生産性」が、
・その3年度前に比べて6%以上伸びていること または
・その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(※1)
※1 この場合は金融期間から一定の「事業性評価」を得ている必要があります。
(2)生産性の計算式
生産性は、「付加価値(※2)」÷ 「雇用保険被保険者数(※3)」です。
※2 付加価値とは、
「営業利益」+「人件費」+「原価償却費」+「動産・不動産賃借料」+「租税公課」
を加えた金額です。
※3 日雇労働非保険者や短期雇用特例被保険者を除きます
尚、「生産性要件」の算定の対象となった期間中に、事業主都合による離職者を発生させていないことが必要となります。
生産性要件算定シート
先の生産性を算定するための「生産性要件算定シート」は厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。実際に算定するにはこのシートに該当する勘定科目の額を「損益計算書」や「総勘定元帳」の各項目から転記します。
生産性要件に係る支給申請には、「生産性要件算定シート」および各勘定科目の額の証拠書類の提出が必要です。(「損益計算書」や「総勘定元帳」など)
個人事業主の場合は、確定申告書Bの「青色申告決算書」や「収支内訳書」の提出が必要です。
生産性要件算定シートはこちらからダウンドーロできます。
厚生労働省ダウンロードページ
使用する申請様式は法人の種類、個人事業主により異なっていますので、該当するシートをダウンロードし算定する必要があります。
生産性要件のまとめ
- 生産性要件は直近年度の決算結果と3年度前の決算結果を比較し、算定シートを用いて算出した結果、6%以上伸びていた場合に助成額が増額されます。
- 1%以上(6%未満)の伸びの場合は、金融機関からの事業性評価が必要
生産性の向上が認められた場合の助成額の例
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
1 有期から正規への転換
通常(1人あたり) :57万円
生産性要件が認められた場合:72万円
差額:15万円
2 有期から無期への転換
通常(1人あたり) :28万5千円
生産性要件が認められた場合:36万円
差額:7万5千円
この例では共に26%の増額となり通常より多くもらえます。
ただ生産性要件は事業の決算の結果に依存しますので、アテにせず増額分はオマケみたいなものと、とらえておかれると良いでしょう。その方が増額された場合の嬉しさが増すと思います。
生産性要件の算定にはひと手間かかりますが、売上や利益が伸びているのであれば算出されることをお勧めします。